
咳
咳
「夜になると咳が止まらない…」
「ずっと咳き込んでいて眠れていないみたい」
「風邪かと思ったけど、こんなに長引いても大丈夫?」
お子さまの咳が続くと、心配でたまらないという保護者の方はとても多いです。特に夜間に咳き込んだり、咳の勢いで吐いてしまったりすると、「すぐに病院に行くべきか」と悩まれることもあるでしょう。
このページでは、小児科専門医の立場から、お子さまの咳に関する基礎知識や原因、受診のタイミング、家庭でできるケア、治療方法などについて、わかりやすくご紹介します。お子さまの体調で不安を感じたときに、少しでも安心につながる内容をお届けできれば幸いです。
咳は、気道に侵入した異物やウイルス、細菌を外へ追い出すための、体の大切な防御反応です。
咳の治療では、咳の原因となっている病気や体の状態を見極めた上で、必要な治療を行います。多くの場合、咳は自然に軽快しますが、場合によっては薬や吸入治療が必要になることもあります。
咳の診断は、「咳の種類」「出る時間帯」「その他の症状」といった情報を総合的に判断します。
(当院ではレントゲンが撮れませんので、必要な方は紹介させていただきます)
お子さまの年齢や症状によっては、喘息や気管支炎、感染症、アレルギーといったさまざまな可能性を考慮して慎重に判断します。
✓ 咳が1週間以上続いている
✓ 夜間に咳き込んで眠れない
✓ 咳と一緒にゼーゼー・ヒューヒューという音が聞こえる
✓ 咳とともに顔色が悪くなる、息苦しそうにしている
✓ 咳で吐いてしまう、食欲が落ちている
①:乾いた咳(空咳)
「コンコン」という音が特徴的で、痰を伴わない乾いた咳です。ウイルス感染の初期や咳喘息、アレルギー反応でも見られます。特に夜間に悪化しやすく、眠りを妨げることがあります。
②:湿った咳(痰がからんだ咳)
「ゴホゴホ」という音で、痰を出そうとする咳です。風邪が長引いたときや細菌感染、副鼻腔炎の合併などが考えられます。痰が出ることでウイルスや細菌を外に出そうとする自然な反応でもあります。
③:ゼーゼー・ヒューヒューする咳
気道が狭くなって空気の通りが悪くなったときに生じる音を伴う咳です。喘息や細気管支炎などの疾患でよく見られます。乳幼児によく見られ、呼吸が苦しそうな場合は早めに受診が必要です。
④:咳込みによる嘔吐
激しく咳き込むことで、のどの刺激が強くなり吐いてしまうことがあります。特に食後や夜間に見られることが多く、咳の勢いによるものであるため、慌てず対応することが大切です。
⑤:長引く咳(慢性咳嗽)
咳が3週間以上続く状態を「遷延性咳嗽」、8週間以上続く状態を「慢性咳嗽」と言います。咳喘息、アレルギー、副鼻腔炎、百日咳、マイコプラズマなど、さまざまな病気が背景にある場合があるため、詳しい診察が必要です。
①:風邪(ウイルス性上気道炎)
子どもに最も多く見られる原因です。ウイルスによって喉や鼻の粘膜が炎症を起こし、咳が出ます。多くは1週間程度で軽快しますが、夜間の咳や鼻水を伴うことがあり、小さいお子さんだと改善まで2~3週間かかることも珍しくはありません。
②:気管支炎・細気管支炎
風邪が気管支まで広がることで咳が悪化することがあります。細気管支炎は主に乳児に見られ、呼吸が早くなったり、胸がペコペコするような呼吸になることもあります。ウイルスが原因であれば、時間がたてば治っていきますが、呼吸困難を伴う場合には入院治療が必要になります。また細菌性では抗菌剤が必要です。
③:喘息・咳喘息
気道の慢性的な炎症によって気管が狭くなることによって、引き起こされる病気です。季節の変わり目や運動、夜間に症状が悪化しやすく、繰り返すゼーゼー音や咳が特徴です。気管支拡張剤(テープの薬や吸入)が効果的です。
④:副鼻腔炎
副鼻腔に膿がたまることで、鼻水がのどに垂れ(後鼻漏)、それが刺激となって咳が出ることがあります。長引く咳や痰、頭痛などの症状を伴うことがあります。痰切の薬や、時には抗菌薬が必要になります。
⑤:百日咳・マイコプラズマ感染症
どちらも咳が非常に長引くことで知られる感染症です。百日咳は咳込みが激しく、顔が赤くなるほど連続して咳をすることがあります。マイコプラズマは学童期に多く、咳が1か月以上続くこともあります。乾いた咳で頻回に咳をしている場合にとくに疑います。咳止めの薬の他、抗菌剤を使ったりします。
①:室内の湿度を保つ
乾燥は気道を刺激し、咳が悪化する原因になります。加湿器などで室内湿度を50%前後に保つことを心がけましょう。湿度60%も良いのですが、部屋にカビが生えやすくなるので注意です。
②:こまめな水分補給
水分をしっかり摂ることで、のどの潤いが保たれ、痰が出やすくなり咳も落ち着きやすくなります。白湯や麦茶などがおすすめです。1~2時間に1回、コップに1杯弱ほどを目安にのんでください。
③:安静に過ごす
活動量を減らし、体力を温存することで回復が早まります。咳がひどい日は無理せず、ゆっくり過ごさせましょう。とくに激しい運動は、気道への刺激になりますので、元気になってから楽しんでください。
④:寝る姿勢を工夫する
枕を少し高めにしたり、上半身を起こし気味にすることで、咳を和らげることができます。特に後鼻漏による咳には効果的です。お子さんの今の状態に合わせた体勢を探すのが大事です。
⑤:咳止め市販薬の使用について
市販の咳止めも有効な場合があります。しかし、処方薬では子供に禁止されている麻薬の成分(コデイン)が含まれているものも一部ありますので注意です。また、市販薬は良い成分でも、含まれている量が少ないことも多いので、市販薬で改善しない場合は、処方薬をもらうようにしてください。
①:咳止め・去痰薬
咳の種類や年齢に応じて、痰を出しやすくする薬や咳を和らげる薬が使われます。お子さんの好みに応じて、粉やシロップ、年長児であれば錠剤などを選んでいきます。
②:吸入治療
気道の炎症や狭窄がある場合には、吸入によって気道を広げる薬を投与します。喘息様症状には特に効果があります。
③:抗菌薬
細菌感染が原因と考えられる場合に処方します。ウイルスには効果がないため、医師が診察のうえ必要と判断した場合のみ使用します。
④:アレルギー治療
アレルギー体質が原因で咳が続いている場合は、抗アレルギー薬で反応を抑えます。
⑤:定期的な経過観察
咳が長引く場合や喘息傾向があるお子さまは、継続的な通院と生活環境の見直しを行い、発作予防と体質改善を目指します。最初に、カゼという診断になっても、継続的にみていく中で、喘息の呼吸音がはっきりするお子さんもいますので、定期的なチェックは大事です。
Q:咳が出ていますが、熱がありません。病院に行くべきでしょうか?
A:元気があり、食事もとれている場合は、2〜3日様子を見ても大丈夫です。ただし咳が長引く場合や、苦しそうなときは受診してください。
Q:咳で吐いてしまいました。大丈夫ですか?
A:咳込みによる嘔吐はよくあることですが、頻繁に吐く場合やぐったりしている場合は、念のため受診をおすすめします。
Q:夜だけ咳が出るのはなぜですか?
A:夜間は気道がリラックスして狭くなったり、鼻水がのどに垂れたりして咳が出やすくなります。寝る姿勢や環境を工夫してみましょう。背景に喘息がかくれている時は、気管支拡張剤で改善することもあります。
Q:咳止めを使ってもいいですか?
A:当院では積極的に使用することをおすすめしています。たしかに、咳そのものは、ウイルスなどを排出するための体の防御反応なので、無理におさえる必要はありません。ですが、受診を考えるぐらい咳でこまっている時には、咳で体力が奪われるぐらいひどい状況かもしれませんので、咳止めが必要かどうかを一緒に考えていきましょう。
Q:兄弟にうつることはありますか?
A:咳の原因がウイルスの場合、飛沫で感染することがあります。手洗いや換気を心がけましょう。
Q:咳が続いていて保育園に行ってもいいですか?
A:元気があり、熱がなく、咳もひどくないようであれば登園可能なことが多いです。ただ、一度は受診していただき感染性が高くないかを評価し、その上で園の方針に従ってください。
咳はよくある症状ですが、その背景にはさまざまな原因が隠れていることがあります。特に小さなお子さまの場合、症状の訴えが難しいため、保護者の方の気づきがとても大切です。
「いつもの風邪」と決めつけず、気になる咳が続くときには、どうぞお気軽にご相談ください。