皮膚疾患
皮膚疾患
乳児湿疹は、一般的に生後数週間から生後数カ月に見られる皮膚の疾患です。この病状は、赤ちゃんの顔や首を中心に発生し、ひどいと前胸部、手足にも広がることがあります。赤ちゃんの皮膚が未熟なことで荒れやすくなることが原因です。
乳児湿疹は、一般的に皮膚の赤み、ザラザラした皮疹などの形で現れます。かゆみを伴うことがあり、子供が手を顔にすりつけたりすることで、さらに湿疹がひどくなることがあります。
乳児湿疹の治療目標は、皮膚の炎症とかゆみを軽減し、皮膚をつるつるのキレイな状態に戻し、バリア機能を修復させることです。一般的な治療方法としては、皮膚の清潔と保湿があげられます。沐浴と保湿剤で改善することが多いですが、改善がみられない場合は軟こう治療の適応になります。ごく軽いステロイド軟こうでもよく反応し、1日だけの塗布でもかなり改善するケースもあります。皮膚が成熟するまでは湿疹を繰り返すこともしばしばで、しばらくは治ってもまた発症して、を繰り返します。何度も繰り返すので、治療やスキンケアをあきらめてしまう方もありますが、肌が荒れている状態が続くとアレルギー発症のリスクになりますので、根気強くケアにあたることが大事です。
アトピー性皮膚炎は、慢性的に繰り返す皮膚炎で、発赤、乾燥皮膚、かゆみ、といった症状がでます。アトピー性皮膚炎は、アレルギー体質(アトピー体質)の一部であり、皮膚のバリア機能の不全が病態に関与し、特定のアレルゲンで増悪する人もいます。
慢性的に繰り返す経過と、特徴的な皮疹からアトピーと診断されます。繰り返すことがアトピーの最大の特徴なので、単に荒れているだけでは診断できません。最初は乳児湿疹と思われていたお子さんが、あまりも症状が繰り返すことで結果的にアトピーと診断されることもあります。ザラザラとした見た目の皮疹で、左右対称性にでることが特徴で、肘、手首、足首、膝の裏などによく皮疹ができます。また、アトピー以外のアレルギー疾患をもっていたり、家族歴も参考になります。
血液検査だけでは通常、アトピー性皮膚炎の診断はできませんが、補助的には使用できます。TARCやSCCA2といった皮膚の炎症の程度を示唆する項目や、アレルギー体質を反映する総IgE値、これらの数値が高いとアトピー性皮膚炎の可能性が高まります。
皮膚を清潔に保つことはアトピー性皮膚炎の管理において重要です。荒れている皮膚には黄色ブドウ球菌が住み着きやすくなり、皮膚炎の悪化やとびひの発症のリスクとなるため、石けんで皮膚をあらってあげることは大切です。しかし、過度な洗浄は皮脂を落としすぎて皮膚を乾燥させ、症状を悪化させる可能性がありますので、優しく適度にすることがポイントです。スポンジなどでも刺激になったりするので、ネットなどでしっかり泡立ててから手でなでるように洗ってあげるのがコツです。
保湿はアトピー性皮膚炎の基本的な治療の1つで、皮膚のバリア機能を改善します。1日1~2回、入浴後などに保湿をおすすめしています。
ステロイド軟膏は、皮膚の炎症とかゆみを抑えるのに有効です。適切に使用することで、より良い肌の状態を保つことができますので、しっかり使っていくことが重要です。ステロイド軟こうの強さにはレベルがあり、過度に強いレベルを使用すると副作用の心配もありますので、適切なレベルの軟こうを提案します。また、しっかり塗ることも大事ですが、あまりにも長期間(何年も)の使用は皮膚の薄くなるなどの副作用を引き起こす可能性があります。一部の副作用は治りにくいですが、ニキビや皮膚が薄くなるという副作用は改善していきます。副作用を多く出さないためには、しっかり治療して、早めに肌の状態を改善させて、状態に合わせて徐々に軟こう量を減らしていくことも大事です。どのように減量するかは非常に難しいのでお子さんに合わせて処方させていただきます。
モイゼルト軟膏は、アトピー性皮膚炎の治療に用いられる非ステロイドの外用薬です。処方できるようになって日が浅いので、実績はステロイド軟こうの方に軍配があがりますが、今のところ目立った大きな副作用がないため使いやすい軟膏です。
重症のアトピー性皮膚炎に対しては、抗体療法(生物学的製剤)が適用されることがあります。これらの薬は体内の特定の免疫応答をブロックし、皮膚の炎症反応を抑えます。
肌がつるつるのキレイな状態になり、保湿剤のみで皮疹が出ず安定していることが治療のゴールです。何カ月、何年で達成できるのか?というお答えは、個々の患者さんにより程度が違うため、いつまで必要かという期間で伝えるのは難しいです。また、約半数のアトピーの子供たちは思春期に入る頃までに症状が改善するか消失することがあるので、年齢である程度考えることはできます。いずれにしても、適切な治療で、治療期間の短縮は見込めますので、しっかりと治療を行うことは非常に大事です。
虫刺症の症状は、虫に刺された部位の腫れ、赤み、かゆみ、痛みなどが主となります。治療には以下のようなものが含まれます:
虫刺されの部位を引っかいてしまったりすることで、バイ菌が皮膚に侵入して感染症を引き起こす可能性があります。この状態を膿痂疹と呼ばれ、「とびひ」と呼ばれることもあります。
とびひの症状は皮膚の赤み、腫れ、痛み、熱感、じゅくじゅくした感じの発疹で、膿が出たりします。抗生剤入りの軟膏や、かゆみがひどい時にはステロイド軟こうの併用、あまりにも広がっている場合には、内服の抗生剤も考慮します。
とびひは、主に皮膚の表面に存在する黄色ブドウ球菌などによって引き起こされる皮膚感染症です。これらの細菌が皮膚の傷口から侵入することで皮膚の感染を引き起こします。
とびひは通常、赤く腫れた皮膚の斑点や小さな水疱から始まり、次第に黄色の膿を含む皮疹が形成されます。かゆみを伴うことが多く、感染部位をひっかくことで爪や指に菌が付着して、さらに別のところをひっかくことで、別のところに新たな感染をどんどん作っていきます。これが「とびひ(飛び火)」の名前の由来です。
以下にとびひの治療法を挙げます:
乳児血管腫は、乳児期にしばしば見られる皮膚の疾患です。この疾患は、皮膚の血管が異常に成長し、通常は赤またはピンク色の盛り上がった皮膚の塊を形成します。これらはしばしば「いちご」に見えるため見えるため、以前はイチゴ状血管腫とも呼ばれました。
乳児血管腫は生後1~4週間後に出現し、徐々に大きくなります。大部分の血管腫は増殖期を経て静止期に入り、その後自然に退行期に進みます。この退行期は通常、1歳~3歳頃に始まり、7歳頃までにほとんどの血管腫が薄くなります。しかし、完全に消えずに痕が残ることもあれば、もともと大きな血管腫だと皮膚がひきつれてしまうこともあります。痕が残るかどうかは、初期に予想することは困難です。
治療方針は大きく3つに分かれます。
乳児血管腫の治療は、その大きさ、位置、および関連する症状によって異なります。小さな乳児血管腫で自然退行が予想される場合、目立たない場所の血管腫の場合は、経過観察を選択します。
皮膚科・形成外科領域では、レーザー治療を行っているところもあります。当院ではレーザー治療は施行できませんが、以前から行われている治療で効果を期待できます。デメリットとしては痛みや目の周囲などにはレーザーを当てられない、という点が挙げられます。
治療の痛みはさけたい、目の周りなどでレーザーをあてられないが治療をしたい、という時にはヘマンジオルシロップというお薬の内服治療を勧めさせていただいています。
ヘマンジオルシロップは、血管腫の治療に使用される薬物で、1日2回の内服で血管腫が小さくなります。開始2~3週間ぐらいでも効果を実感できる方もあります。治療期間は6カ月を基本とし、症状の推移に応じて延長していきます。副作用に注意が必要です。低血糖、喘息の悪化、脈への影響を考えます。低血糖は哺乳後に薬を内服することで回避できます。喘息のお子さんの場合、発作症状が悪化する場合があるので、カゼ症状がみられる時にはさけていただいています。そして、このお薬はもともと高血圧の薬でしたので、内服後に血圧や脈拍は若干さがりますが体に問題となるほど低下することはほぼありません。しかし、反応性は患者さんごとに違うため、最初は少ない量ではじめ、開始時と2回の増量時には念のためクリニック内で内服後2時間の経過観察をさせていただきます。