
背が低い
背が低い
「クラスで一番小さいけど、成長が遅いだけ?」
「周りと比べて身長が明らかに低くて心配…」
「両親とも小柄だけど、治療が必要なこともあるの?」
お子さまの成長、特に「身長」は、多くの保護者の方が気にされるテーマのひとつです。
成長には個人差があるため、「もう少し様子を見よう」と考える方も多いかと思いますが、中には病気やホルモンの異常が隠れていることもあり、適切な時期に専門的な診察・検査を受けることが重要です。
このページでは、小児科専門医の視点から、子どもの身長が低いと感じたときの見極め方、受診のタイミング、考えられる原因、治療方法、家庭でできるサポートなどについてわかりやすくご説明します。
「うちの子もしかして…」と思われたら、ぜひ早めにご相談ください。
低身長の治療は、原因によって異なります。多くの場合、「成長曲線」「骨年齢」「ホルモンの状態」などを確認し、成長の遅れが一時的なものか、治療が必要なものかを慎重に見極めます。
原因が明らかで、治療が必要な場合には以下のような対応が行われます:
低身長の診断では、次の情報をもとに総合的に評価を行います:
✓ 成長曲線が横ばい、または標準より大きく外れている
✓ 学校健診で「要経過観察」と指摘された
✓ 両親の予測身長に比べて著しく低い
✓ 思春期が来るはずの年齢なのに身体の変化がない
✓ 年に4cm未満しか伸びていない(5歳以降)
✓ 周囲と明らかに差があり、本人が悩んでいる
①:クラスで常に一番小柄
年齢相応に身長が伸びていない、学校での健康診断でもずっと下位に位置している場合、成長障害の可能性があります。
②:成長曲線が横ばい
母子手帳や学校健診などで記録された成長曲線を見て、標準から大きく下回っていたり、急に伸びが止まっている場合は注意が必要です。
③:思春期の兆候が見られない
通常、女の子は10歳頃、男の子は12歳頃より思春期の変化が出てきます。その時期を過ぎても第二次性徴が始まらず、身長のスパート(急激な伸び)も見られない場合、思春期が遅いため身長が伸びていない可能性があります。
④:身長が低く、顔つきや体格が幼いまま
成長ホルモンの分泌不全では、身長だけでなく全体的に幼い印象が残ることがあります。
⑤:兄弟姉妹や同級生と比べて成長が著しく遅い
同じような環境で育っている兄弟姉妹との間に大きな身長差がある場合には、個人差だけで済まない可能性もあります。
①:家族性低身長
両親ともに小柄である場合、お子さんの身長も小さめになる傾向がありますが、成長のペースが正常であれば「体質的な低身長」と考えられます。
②:成長ホルモン分泌不全性低身長
脳下垂体から出る成長ホルモンの分泌が少ないことによって身長が伸びない病気です。適切な診断とホルモン治療によって改善が見込めます。
③:思春期遅発傾向
通常の時期に思春期が始まらず、身長が伸びる時期が遅れてしまう状態です。多くは自然に追いつきますが、評価と経過観察が必要です。
④:ターナー症候群
染色体が一般女性と異なる特徴をもつ女児です。低身長や思春期の遅れが主な症状、幼児期に中耳炎を繰り返す人も多いです。早期発見と成長ホルモン治療により身長の改善が期待できます。
⑤:慢性疾患や栄養障害による二次性低身長
腎臓病、心疾患、甲状腺機能低下症、栄養失調、摂食障害などが背景にあると、身長の伸びに影響することがあります。
①:成長記録を見返す
幼稚園や学校で身長や体重を定期的に記録しているはずですので、それを成長曲線にしてチェックすることが大事です。成長曲線の作成が難しい、見方が分からない、というときにはご遠慮なくご相談ください。
②:十分な睡眠を確保する
成長ホルモンは夜間の深い睡眠時に多く分泌されます。22時まで(幼児は21時まで)に寝ることを目標に、規則正しい生活リズムを作りましょう。
③:栄養バランスの良い食事を心がける
炭水化物(特に大事です)、タンパク質、カルシウム、亜鉛、ビタミン類など成長に必要な栄養素を意識した食事をとることが大切です。
④:適度な運動で刺激を与える
ジャンプやかけっこなどの運動は、骨に刺激を与えて成長を促します。無理のない範囲で、外遊びやスポーツを楽しみましょう。
⑤:子どもの自己肯定感を育てる声かけ
身長が低いことに対して不安を感じているお子さまには、「比べる」より「見守る」姿勢で接することが心の支えになります。身長は大事な要素ではありますが、人生のすべてではありません。
①:成長ホルモン治療
成長ホルモンの分泌が少ないと診断された場合、自己注射によるホルモン補充治療が行われます。該当する人は少ないですが、診断基準を満たせば、保険適応で実施可能です。
②:思春期の観察
思春期が遅れている場合には、まずは適切な経過観察が必要になります。いつまでも思春期が来ない場合には、思春期が来ない原因を精査したのち、ホルモン補充を行うこともあります。
③:骨年齢の評価
レントゲンで確認できる骨年齢をもとに「まだ伸びる余地があるかどうか」を判断します。
④:染色体異常に対する包括的ケア
ターナー症候群などが原因の場合、成長ホルモンのほか、婦人科的なフォローや心臓・腎臓などの定期評価も必要です
⑤:特発性・家族性低身長への対応
原因が特定できない場合でも、身長の伸びや心理的影響を考慮しながら、栄養面や生活面で改善できることはないか、可能な限り考えていきましょう。
Q:背が低いだけで病院に行ってもいいのですか?
A:はい。気になるときは早めのご相談をおすすめします。早期発見・早期治療によって成長のチャンスを逃さないことが大切です。
Q:成長ホルモンの治療は痛い?副作用は?
A:注射は細い針で、ほとんど痛みはありません。副作用はまれですが、頭痛などの症状がでていないかを確認しつつ、定期的な血液検査でチェックします。
Q:治療が必要かどうか、いつ判断できますか?
A:骨年齢や成長ホルモンの分泌検査をもとに判断します。年齢・症状・成長曲線によって必要性が変わります。
Q:親が小柄なら、あきらめた方がいい?
A:家族性の要因もありますが、医学的介入で身長を伸ばせるケースもあります。気になる時は、一度ご相談ください。
Q:本人が気にしていない場合でも受診すべきですか?
A:保護者の方が気づいたときが受診のタイミングです。ただ、身長が低いことを過度に心配させないことも大事です。お悩みでしたら、一度親御さんだけで受診していただき、ご相談も可能です。
Q:何歳までなら治療に効果がありますか?
A:骨の成長が止まる前(骨端線が閉じる前)であれば治療効果が期待できます。できれば、思春期がはじまるまでに治療を始めていることが望ましいので、早期発見が鍵となります。
Q:かなり低いと思うんですが、病院を受診したら低身長ではない、と言われました
A:医学的に低身長とされるのは-2.0SDという基準をしたまわる人をさします。ざっくりとは、2学年下の子より低いぐらいのお子さんであり、想像しているよりかなり低いお子さんが対象となります。最近は、-2.0SDを下回ってるかどうかをWEBサイトでも調べることができるようになっています。(例:成長と健康https://jcrgh.com/index.html)。お子さんが対象となるかどうかよく分からない、といった場合でもお気軽にご相談ください。
Q:身長を伸ばすために、牛乳飲んだり、サプリメントを使うことは有効ですか?
A:私も、自分の身長を伸ばすために、中学生の時に牛乳をたくさん飲んだ経験があります。牛乳はカルシウムが豊富なので、身長に影響すると思われますが、強い骨はできますが、長い骨ができるわけではありません。サプリメントに関しては、日本小児内分泌学会が、過去に声明を出しており効果が認められるものはないとしています。牛乳もサプリメントもそうですが、もし、摂取する対象の栄養素が極端に不足しているようなお子さんには効果があります。ただ、飲むだけで身長が伸びる、ということはほとんどありません。
Q:血液検査などの検査は絶対に必要ですか?
A:医学的に低身長の定義にあてはまったり、成長が止まっているようなお子さんは検査が積極的に勧められます。身長が伸びない原因が、肝臓や腎臓、場合によっては脳腫瘍や白血病など、何かしら大きな病気がある場合、小柄なことも気になりますが、命の危険性があるかもしれないからです。検査が必要な状況かどうかは、診察の上、判断させていただきます。
お子さまの「小柄さ」は、個性のひとつであると同時に、身体からのサインであることもあります。大切なのは、「様子を見すぎてしまわないこと」。
「早めに相談しておけばよかった」と後悔しないためにも、気になるときはお気軽にご相談ください。
お子さま一人ひとりの成長を、私たちは全力でサポートいたします。