
鼻水
鼻水
「また鼻水が出てきたけど、大丈夫かな…」
「透明だから様子を見ていいの?それとも病院に行くべき?」
「こんなに何度も風邪をひいてるけど、体質の問題?」
鼻水は、乳幼児から小学生まで、日常的によく見られる症状です。しかしその一方で、「ただの風邪」と見過ごしてしまいがちな一方で、「もしかして別の病気では…」と不安になる保護者の方も多いのではないでしょうか。
このページでは、小児科専門医の視点から、鼻水の種類や原因、受診の目安、ご家庭でできるケアの方法、治療内容などをわかりやすく解説しています。お子さまの健康を守るための情報として、ぜひご活用ください。
鼻水は、体にとって異物を排除しようとする大切な防御反応のひとつです。ウイルスや細菌、アレルギー物質が鼻の中に侵入したとき、鼻水がそれらを洗い流そうとする働きをします。
そのため、「鼻水=すぐ止めるべきもの」ではありません。本当に必要なのは、その鼻水の“原因”に応じた適切な対応や治療です。
診察では、お子さまの様子や鼻水の性状、ほかの症状の有無を総合的に判断します。
✓ 鼻水が1週間以上続いている
✓ 黄色や緑色の鼻水が出ていて、元気もなく熱もある
✓ 鼻づまりがひどくて眠れない、授乳がうまくできない
✓ 鼻水と一緒に咳がひどくなってきた
✓ 耳を触ったり、泣いて嫌がる(中耳炎の可能性)
①:透明でサラサラした鼻水
ウイルス性の風邪やアレルギー性鼻炎によく見られます。症状の初期段階に多く、くしゃみや目のかゆみを伴う場合はアレルギーの可能性もあります。季節の変わり目や花粉の多い時期に注意が必要です。
②:黄色や緑の粘り気のある鼻水
風邪の中盤~後半や副鼻腔炎のときに見られます。鼻づまりや後鼻漏(鼻水がのどに垂れる)なども起こりやすくなります。
③:鼻水による咳(後鼻漏)
鼻水がのどに流れ込むと、それを排除しようとして咳が出ます。特に夜間や朝方に咳が強くなるのが特徴で、咳が長引く一因にもなります。
④:鼻づまりによる口呼吸・いびき
鼻詰まりが続くと口呼吸になり、睡眠の質が低下したり、いびきが目立つことがあります。小さなお子さまでは授乳や食事にも影響が出ることがあります。
⑤:繰り返す鼻水
保育園や幼稚園に通う年齢のお子さまは、年に何度も風邪をひくことが珍しくありません。免疫が未熟な時期なので、体を鍛えている過程と前向きにとらえることもできますが、アレルギーや副鼻腔炎が隠れていることもあります。
①:ウイルス性上気道炎(いわゆる風邪)
最も一般的な原因で、多くの場合は数日〜1週間で自然に改善します。乳幼児の場合は長引くことも多く、改善に2~3週間かかるとする報告もあります。透明~白っぽい鼻水が特徴です。咳や発熱、機嫌の悪さを伴うこともあります。
②:アレルギー性鼻炎
スギ、ヒノキ、ハウスダスト、ダニなどに対するアレルギー反応です。くしゃみ、目のかゆみ、透明な鼻水が長引くのが特徴です。季節性と通年性に分かれ、原因によって対策も異なります。
③:副鼻腔炎
風邪のあとに続く鼻水、頭痛、咳、夜間の咳き込みなどが見られます。膿が副鼻腔にたまり、黄色~緑色の鼻水が続くのが特徴で、抗菌薬が必要になることもあります。
④:中耳炎の合併
鼻水が耳管をつまらせることで中耳に炎症が起こっていき、中耳炎になります。耳痛、発熱、ぐずり、耳だれなどの症状が現れ、特に乳幼児に多く見られます。
⑤:鼻内異物
片方の鼻から悪臭を伴う鼻水が出る場合、小さな異物(ビーズ、紙くずなど)が入っている可能性があります。早期に耳鼻科での処置が必要です。
①:鼻水吸引
乳幼児は自力で鼻をかむことができないため、電動鼻吸い器や口吸い器を使って鼻水をこまめに吸ってあげましょう。中耳炎や副鼻腔炎の予防にもつながります。鼻吸いそのものは嫌がる子が多いので、あまりにも嫌がる場合には、寝る前や食事前などに絞って鼻吸引することがおすすめです。
②:室内の湿度を保つ
空気が乾燥すると鼻水が粘りやすくなり、排出しにくくなります。室内は湿度50%を目安に保ちましょう。
③:こまめな水分補給
水分補給は、粘膜の潤いを保ち、鼻水の排出を促します。麦茶、白湯、湯冷ましなどがおすすめです。
④:鼻をかむ練習
2歳以降になると、鼻をかむ練習を始めるのが理想的です。「片方ずつフンッと軽く」がポイントです。ティッシュを使った遊び感覚で覚えさせるのも有効です(当院では鼻吹きゲームと言ったりしています)。
⑤:アレルゲン対策
アレルギーが関係している場合は、ハウスダストの除去、空気清浄機の使用、エアコンの清掃、寝具の管理など、生活環境を整えることで症状を軽減できます。
①:抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬など)
アレルギー性鼻炎が原因の場合、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどを抑える薬を使用します。年齢や症状に応じて適切な種類が選ばれます。
②:去痰薬・粘液溶解薬
粘り気のある鼻水をサラサラにし、排出しやすくする薬です。後鼻漏や咳が続くときにも使われます。
③:抗菌薬
細菌感染(副鼻腔炎、中耳炎など)が疑われる場合には抗菌薬を処方します。ウイルス性の風邪では使用しません。
④:点鼻薬・吸入薬
症状に応じて、鼻粘膜の炎症を抑えるための点鼻薬や、アレルギー性鼻炎の長期管理に使用される吸入ステロイド薬が使われることもあります。
⑤:耳鼻科との連携治療
副鼻腔炎の再発や鼻の構造的な問題が疑われる場合には、耳鼻科と連携して詳しい検査や処置を行います。
Q:鼻水が出ているけど、熱もなく元気です。様子見でいいですか?
A:元気で食欲があるなら、数日様子を見て大丈夫です。ただし、1週間以上続く場合はご相談ください。
Q:黄色い鼻水が出ています。病院に行った方がいいですか?
A:風邪の回復期にも見られますが、長引くようなら副鼻腔炎の可能性もありますので受診をおすすめします。
Q:兄弟にうつることはありますか?
A:ウイルス性であれば飛沫感染します。手洗いや咳エチケットを心がけましょう。
Q:鼻水だけで保育園に行かせても大丈夫ですか?
A:熱がなく、元気があれば登園可能なことが多いですが、園の方針や他の症状によって判断になります。迷う場合はご相談ください。
Q:市販の点鼻薬を使ってもいいですか?
A:使っていただいてもかまいません。かならず薬剤師さんには相談してください。市販薬で改善しない場合は、処方薬が必要かを検討しますので、ご相談ください。
Q:風邪をひきやすい体質なのでしょうか?
A:保育園・幼稚園の子どもは年間で8〜10回程度風邪をひくのは珍しくありません。多くは成長とともに改善していきます。
鼻水は「ただの風邪」と軽視されがちですが、実は様々な病気のサインにもなり得る重要な症状です。保護者の方のちょっとした気づきが、お子さまの健康を守る大切なきっかけになるかもしれません。
気になる症状があるときは、いつでもご相談くださいね。