鼻水を止めるお薬は実は危険?抗ヒスタミン薬の注意点
- 2024年1月10日
- 医学
小児科に受診される一番多い症状が咳と鼻水で、一番多い診断名がカゼ、だと思います。
咳も鼻水もどちらもつらい症状ですが、今回は鼻水にフォーカスします。
「鼻水を止めれませんか?」と言われることも多いのですが、その時に
「じゃぁ、鼻水の薬を出しましょう」となる場合には実は注意しないといけないこともあります。
結論としては
・使う場合には副作用、とくに眠気と痙攣に注意
この2点です。
順番に解説していきます。
鼻水を止める薬って、結局なんなの?
「鼻水を止める薬」として処方されることがあるのは、抗ヒスタミン薬という種類の薬です。
アレルギー性鼻炎の患者さんであれば、このヒスタミンが作用して、くしゃみやたくさんの鼻水といった症状となります。アレルギー性鼻炎の患者さんの治療として、ヒスタミンの働きをおさえる、抗ヒスタミン薬が使われることから、「鼻水を止める薬」=抗ヒスタミン薬、とは言えるかもしれません。
以前は、よくカゼに対しても抗ヒスタミン薬は出されていました(私もしばしば出していました)
カゼでよく出されるのは痰切の薬
しかし、最近ではカゼで出されることがあるのは、痰切の薬(去痰剤)です。成分でいうと、カルボシステイン(商品名:ムコダイン)、アンブロキソール(商品名:ムコソルバン)です。この2種類は副作用がきわめて少なく安全に使うことができます。この薬で狙うのは、鼻水の量を減らすのではなく、鼻水のねばっこさを解消して、鼻をかんだり、吸引することで、鼻がスッキリする、ということを目的にしています。そのためか、痰切の薬ですが、内服7日目あたりの咳をやわらげるという作用も下腔仁されています。
そもそも、カゼの時にはウイルスなどの病原体を鼻水をつかって外に押し出そうとしているので、止めるというよりは、治療としては鼻水を出やすくする、と考えるほうが自然です。
抗ヒスタミン薬は最近ではあまり使われないの?
抗ヒスタミン薬は、花粉症などのアレルギー性疾患には効果が高いのでよく使います。しかし、カゼに対してはあまり使われなくなってきました。それは、抗ヒスタミン薬の副作用によるものです。
古いタイプの抗ヒスタミン薬は副作用が強い
抗ヒスタミン薬には、第1世代(古いタイプ)と第2世代(新しいタイプ)と大きく2つに分類されます。ざっくりとは、古いタイプのほうが副作用が強い、と考えてください。
では、どんな副作用があるのか?
・集中力低下
・痙攣との関連
・(カゼだと)逆に鼻が詰まる可能性がある
昔、カゼ薬は眠くなりやすい、と聞いたことがある人もあるかもしれません。それは、抗ヒスタミン薬が含まれていたからです。また、本人が眠いとまで感じなくても、集中力の低下がみられることがあり、気が付いたら学校の成績が下がってきた、仕事でミスが増えていた、ということがあります。
痙攣との関係も指摘されているので、てんかん治療中の方や、熱性痙攣をおこしたことがある人は注意です。
また、カゼの時に使うと、鼻水の量が減りはしつつも、よりねばっこい感じの鼻水になって、よけいに鼻がつまったと感じる方もあります。
抗ヒスタミン薬はどう使い分けてるの?
では、抗ヒスタミン薬はまったく使わないのでしょうか?
使う場合に考えることには、以下のようなものがあります。
・アレルギー性鼻炎(花粉症)の時に使う
・カゼに対しては抗ヒスタミン薬を使わないのが基本
(カゼでも鼻水が多すぎるときなどには試すこともあり)
使うなら第2世代(新しいほう)を使うのが基本です。副作用がかなり少なくなっているので、非常に使いやすいです。
そもそもは、ヒスタミンの働きを抑制して、症状を緩和させることをねらった薬なので、蕁麻疹やアレルギー疾患である花粉症などに対して使います。
カゼでも、鼻水が非常に多いこともあり、その時には副作用に注意しながら使うこともありますが、カゼに対しては抗ヒスタミン薬を使わない、ということが基本となります。
第1世代(古いタイプ)は全く使われないの?
アレルギー性鼻炎のひどい人の場合、第2世代抗ヒスタミン薬や、他の薬剤を使っても症状がひどいときに、あえて使うケースもあります。根拠としては薄めですが、鼻閉に対しては第1世代の方がキレがよいという意見も耳にします。いずれにしても、他の薬剤で効果が低い場合の選択枝の1つという位置づけで私は考えています。
一方で、あえて眠気の副作用を利用するケースがあります。鼻づまりや咳がひどく、夜が眠れないときなどには時に、寝る前に使う方法です。症状が長引き、夜がなかなか眠れないと、本人もしんどいですし、お世話をする親御さんもなかなか眠れず非常につらいです。そんな時に、少し寝れるだけでも、かなり楽になりますので、他の副作用も考えたうえで処方させていただくこともあります。
第1世代抗ヒスタミン薬は、通常1日3回飲むものなので、夜寝る前の1日1回の内服だけだと、日中の眠気への影響は少なく、また数日のみの内服にとどめていただくことで長期的な集中力の低下にはつながらないと考えています。
ただし、痙攣との関係は気を付けないといけないので、てんかん既往の方や、熱がある時には第1世代抗ヒスタミン薬は飲まないことを推奨しています。
まとめ
鼻水を止める薬、ということで抗ヒスタミン薬について解説をしました。
抗ヒスタミン薬についてまとめると
・使うのはアレルギー性疾患
・使う場合には副作用、とくに眠気と痙攣に注意
・眠れるようにあえて夜に使う作戦もある
以上となります。
何か、症状でお困りのことや、薬の調整がしたい方は、受診をしてご相談ください。
参考文献:Acetylcysteine and carbocysteine for acute upper and lower respiratory tract infections in paediatric patients without chronic broncho‐pulmonary disease