子どもの発熱に解熱剤は使うべき?医学的根拠に基づく当院の回答|玉谷キッズクリニック【箕面市船場西の小児科】

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子どもの発熱に解熱剤は使うべき?医学的根拠に基づく当院の回答|玉谷キッズクリニック【箕面市船場西の小児科】

子どもの発熱に解熱剤は使うべき?医学的根拠に基づく当院の回答

玉谷キッズクリニックの菅原です。

今回は、子どもの発熱に熱を下げる解熱剤を使うかべきかどうかについて解説します。お子さんはよく熱を出しますし、それこそ保育園や幼稚園に行きだすと毎週のように熱を出すこともよくあります。対処法については様々な意見がありますが、特に、「解熱剤を使うべきかどうか」という点には、多くの方が疑問に思っていると思います。

当院では、「発熱時にしんどければ、解熱剤は積極的に使う」ということをおすすめしていますが、論文の根拠も交えて解説させていただきます。

 

 

解熱剤使用と回復期間の関係:科学的根拠に基づく考察

まず、よく耳にする「解熱剤を使うと治りが遅くなる」という説について、根拠があるのでしょうか?ウイルスや細菌と戦うために、体の防御反応として免疫応答がおき、熱がおきるのだから、それを下げるのは防御反応を妨げる、というのが理論的な根拠ですが、実際はどうなのでしょうか?

実際に、解熱剤を使ったらどうだったか、という研究はあります。

2007年の論文1)で、18~65歳の174人にロキソニンを使った場合と使っていない場合を比べると約半日ほどロキソニンを使っているグループの方が罹病期間が長かったというものがあります(ロキソニン群8.94日 vs プラセボ群8.39日)。ただし、この差は統計的に有意ではありませんでした(=統計学的から見た場合には、どちらも同じで差はないですよ、という意味)。

つまり、解熱剤の使用が回復を遅らせる影響は極めて小さく、解熱剤をつかったからといって病気が治りにくくなるとは言えません。

 

 

 

患者のQOL(生活の質)を重視する当院の方針

それでは、解熱剤の使用しても回復期間にほとんど差がないのであれば、どのようなアプローチが望ましいでしょうか?当院では、患者様、特にお子様の快適さ、過ごしやすさを考え、「熱でしんどい時には積極的な解熱剤の使用」をお勧めしています。

 

その理由は以下の通りです:

  1. 苦痛の軽減:発熱は、不快感や倦怠感を伴います。解熱剤の使用により、これらの症状を和らげることができます。
  2. 脱水予防:高熱が続くと、体内の水分が失われやすくなります。解熱剤で体温を下げることで、脱水のリスクを軽減できます。
  3. 睡眠の質の向上:熱があると、十分な睡眠を取ることが難しくなります。解熱剤の使用により、より良質な睡眠を確保し、回復を促進することができます。
  4. 食欲の改善:発熱時は食欲が低下しがちです。体温が下がることで食欲が戻り、食欲の改善が期待できます。
  5. 全体的な快適さ:体温が下がることで、お子様はより快適に過ごせます。これは精神的なストレスの軽減にもつながります。

これらの利点を考慮すると、解熱剤を使用することでお子様の苦痛を軽減し、より快適に過ごすことができるメリットの方が大きいと当院では考えています。

 

 

解熱剤使用の適切な判断:個々の状況に応じたアプローチ

ただし、すべての発熱ケースで解熱剤が必要というわけではありません。以下のような場合は、解熱剤の使用を控えることをお勧めします:

  1. 熱はあっても元気な場合:体温が高くても、活動的で機嫌が良い場合は、必ずしも解熱剤を使用する必要はありません。
  2. 軽度の発熱(38℃未満):一般的に、38℃未満の熱では、特に不快感がなければ解熱剤は不要です。
  3. アレルギーや既往歴がある場合:特定の薬剤にアレルギーがある場合や、過去に解熱剤で副作用が出た経験がある場合は注意が必要です。

 

また、解熱剤の使用に際しては、以下の点に注意することが重要です:

  • 適切な用量を守る:過量投与は副作用のリスクを高めます。
  • 使用間隔を守る:頻繁な使用は避け、医師の指示に従ってください。
  • 症状の観察:解熱剤使用後も、お子様の状態を注意深く観察してください。

 

結論として、当院では発熱時の解熱剤使用を積極的に推奨しています。ただし、その使用は個々の状況に応じて判断すべきであり、不安な点がある場合は外来でご相談ください。

 

 

まとめ

今回の話をまとめます。

・解熱剤の使用で、病気が治りにくくなることは考えにくい

・解熱剤を使った方が楽に過ごしやすい

・元気な時には使う必要がない

 

参考になれば幸いです。

 

 

1) Goto M, et al; Influence of Loxoprofen Use on Recovery from Naturally Acquired Upper Respiratory Tract Infections: A Randomized Controlled Trial
, Intern Med 46:1179-1186, 2007