小児マイコプラズマ感染症の治療法:3種類の抗生剤と注意点
玉谷キッズクリニックの菅原です。
今回は、最近流行している「マイコプラズマ感染症」について、特にその治療の中心となる抗生剤にフォーカスして説明します。
マイコプラズマ感染症の治療:抗生剤の役割
マイコプラズマ感染症の主な症状には、持続する咳、発熱、倦怠感などがあります。治療の中心となるのが抗生剤の使用です。
適切な抗生剤を使うことで症状の緩和が期待できますが、マイコプラズマは細胞壁をもたないため、使用する抗生剤はしっかり選ぶ必要があります。
抗生剤を飲んでいるのに治らない、という時にはマイコプラズマに対応していない抗生剤の可能性もあります。
子どものマイコプラズマ感染症治療に使用する3種類の抗生剤
子どものマイコプラズマ感染症の治療には、主に3種類の抗生剤が使用されます。それぞれの特徴と注意点について詳しく見ていきましょう。
1. マクロライド系抗生剤
マクロライド系抗生剤は、マイコプラズマ感染症の第一選択薬として広く使用されています。しかし、最近、薬剤耐性のマイコプラズマが出てきていることから、効かないというケースもちらほらみられています。非常に苦いこともつらいところですが、エリスロシンはまだ
代表的な薬剤:
- クラリスロマイシン(薬剤名:クラリス)
- アジスロマイシン(薬剤名:ジスロマック)
- エリスロマイシン(薬剤名:エリスロシン)
注意点:
- まれに胃腸障害(吐き気、下痢)が見られることがある
- 薬剤耐性マイコプラズマに対しては効きにくい
- とてもとても苦い
2. ニューキノロン系抗生剤
ニューキノロン系抗生剤は、マクロライド耐性菌に対して効果を発揮します。ニューキノロン系は、成長過程の小児の関節や軟骨に影響する可能性があるため用いることはできませんが、トスフロキサシン(オゼックス)という薬については小児でも使用ができます。ちなみにオゼックスはイチゴ味でとてもおいしいです。
代表的な薬剤:
- トスフロキサシン(薬剤名:オゼックス)
注意点:
- トスフロキサシン以外は小児に使いにくい(成長期の関節や軟骨への影響の可能性がある)
- 発疹がでることがある
3. テトラサイクリン系抗生剤
テトラサイクリン系抗生剤は、主に8歳以上の小児や成人に使用されます。マイコプラズマに対しては、ほぼ効くイメージを持っていますが、8歳未満のお子さんに対して使うと歯が黄色くなるため使えません。
代表的な薬剤:
- ミノサイクリン(薬剤名:ミノマイシン)
注意点:
- 8歳未満の小児には歯の着色や骨の成長阻害のリスクがあるため使用を避ける
- 光線過敏症の可能性があるため、できるだけ日光を避ける必要がある
- 妊婦や授乳中の母親には使用を避ける
マイコプラズマ感染症に抗生剤は絶対に必要なのか?
マイコプラズマ感染症の治療において、抗生剤の使用が一般的ですが、すべての症例で絶対に必要というわけではありません。
マイコプラズマに感染しても、2~4週間と長い経過にはなるものの、自然に改善することが多いからです。
つまり、軽症の場合や、自然経過で改善が見込まれる場合には、抗生剤を使用せずに経過観察を行うこともあります。
ただし、以下のような場合には抗生剤を積極的に使うことを考えます:
- 高熱が続く場合
- 咳が激しく、日常生活に支障がある場合
- 肺炎などの合併症が疑われる場合
- 重症化の懸念がある場合
抗生剤以外の対症療法
抗生剤の使用と並行して、または軽症例では抗生剤を使用せずに、以下のような対症療法を行うことがあります:
- 咳止め薬や去痰薬の使用
- 解熱鎮痛薬の使用
マイコプラズマに感染したからといって、全員が肺炎になるわけではありません。かるいカゼとしか思えない、軽症のマイコプラズマ感染も存在します。
軽症の場合には、通常のカゼに準じた治療でも十分です。
まとめ
マイコプラズマ感染に対して、抗生剤を使うことをおすすめはしますが、全員が必要なわけではありません。
また、抗生剤の選択もスタンダードなものを選びつつも、経過が思わしくない場合には、耐性菌であることも考慮して、種類を変える必要もあります。
内服薬について疑問がある時は、ぜひ外来でご相談ください。