2024年10月から肺炎球菌ワクチンが変更!バクニュバンスとプレベナー20:新旧ワクチンの違い
- 2024年10月5日
- ワクチン
こんにちは、玉谷キッズクリニックの菅原です。
2024年10月から新たな肺炎球菌ワクチンが追加されました。
実は、2024年4月にも肺炎球菌が新しくなったばかりなので、短期間での追加であることから私自身もびっくりしています。
保護者の方で意識されている方は少ないと思いますが、どのように変わったのか?ということについて解説します。
肺炎球菌ワクチンの変更:何が、どう変わるの?
2024年10月から、定期接種の肺炎球菌ワクチンが新しくなります。
そもそも、肺炎球菌ワクチンは前からありましたが、何が変わるのでしょうか?
変更の背景
肺炎球菌は、乳幼児に重篤な感染症を引き起こす可能性のある細菌です。髄膜炎や敗血症、肺炎などの深刻な疾患の原因となることがあり、特に5歳未満の子どもたちにとっては危険です。
髄膜炎は小児科医師をしているものとしては脅威で、亡くなってしまうお子さん、重度後遺症となるお子さんがおられましたので、肺炎球菌ワクチンには本当に助けられました。
しかし、肺炎球菌は1種類だけではなく、いろいろな型が存在します。髄膜炎などをとくに発症しやすい型を中心にワクチンの開発が進められてきましたが、まだカバーしきれていない型が存在しました。
新しいワクチンは、より多くの型をカバーできるようになってきているんです。
肺炎球菌ワクチンの種類:カバーする型に違い
肺炎球菌ワクチンには、カバーする肺炎球菌の型が異なる複数の種類があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
PCV13(13価結合型肺炎球菌ワクチン)
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- ・2024年3月までの小児肺炎球菌ワクチン
- ・カバーする型:1, 3, 4, 5, 6A, 6B, 7F, 9V, 14, 18C, 19A, 19F, 23F
- ・名前:プレベナー13
PCV15(15価結合型肺炎球菌ワクチン)
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- ・2024年4月からはじまったワクチン
- ・カバーする型:PCV13の13種 + 22F, 33Fの合計15価
- ・特徴:PCV13よりも2つ多くの型をカバーし、より広い型をカバー
- ・名前:バクニュバンス
- ・ワクチンのシールは明るい緑色
PCV20(20価結合型肺炎球菌ワクチン)
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- ・2024年10月からはじまったワクチン
- ・カバーする型:PCV15の15種 + 8, 10A, 11A, 12F, 15Bの合計20価
- ・特徴:現在最も多くの型をカバーする小児肺炎球菌ワクチン
- ・名前:プレベナー20
- ・ワクチンのシールは青緑色
数字が大きいほど、より多くの型をカバーしていることがわかります。これにより、より広範囲の肺炎球菌感染症から子どもたちを守ることができるんです。
PCV15とPCV20、どちらが効果的?
両方とも効果的なワクチンですが、PCV20はより多くの型をカバーしているため、「新しいPCV20の方がいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、実は話はそんなに単純ではありませんでした。
以前のPCV15(バクニュバンス)の方が免疫がしっかりつく?
肺炎球菌ワクチンの開発の段階で、当初より多くの型をカバーしようと研究されていました。
最初から、すべての型をカバーしていたら良いように思いますが、そこが難しいところです。
数多くの型をカバーしようとすると、それぞれの型に対する免疫が付きにくくなるんです。
たくさんカバーしようとして、ひとつひとつがおろそかになってしまうイメージでしょうか。
そのため、とくに重症化リスクの高い型を中心にワクチン開発がすすめられ、徐々に型の種類を増やしていっても免疫がつくように研究が進められていった、という経緯があります。
これまでは、研究者の方々が努力していただいたおかげで、型を増やしても免疫がしっかりつくワクチンが開発されてきました。
10月からはじまるプレベナー20(PCV20)も十分といってもいいほど免疫はつくのですが、10月より前にはじまっているバクニュバンス(PCV15)の方が対応している型に関しては免疫がよりしっかりとつきます。
結局、PCV15とPCV20のどちらがよいのか?
もう少しまとめると
●PCV15(バクニュバンス)のほうが免疫がしっかりつく
●PCV20(プレベナー20)のほうが幅広くカバーする
となります。
このような違いはあるものの、どちらも感染予防効果に遜色はありません。
とくにリスクが高い型に関してはPCV15(バクニュバンス)もPCV20(プレベナー20)も十分カバーしているので、十分感染予防効果はあります。
しかし、上記のような違いがあることから、海外ではどちらかを選択できるようになっているところもあります。
重要な注意点:バクニュバンス(PCV15)とプレベナー20(PCV20)の交互接種はNG
今日の話を聞いてもらった人の中には
「うちの子はバクニュバンス(PCV15)ではじめたけど、幅広くカバーしたいから次からはプレベナー20(PCV20)を打ちたい」
と思う人があるかもしれません。
しかし、バクニュバンス(PCV15)とプレベナー20(PCV20)の交互接種はできません。これは非常に重要な点ですので、必ず覚えておいてください。
交互接種禁止の理由
これは、PCV15とPCV20を交互に接種することで、効果や安全性に関して十分なデータがないことが理由です。
データがないことが理由なので、今後、交互接種はOKとなる可能性はありますが、現時点では交互接種はNGです。
なので、バクニュバンス(PCV15)ではじめた方はバクニュバンスですべて打ち終える必要があり、10月以降は基本的にプレベナー20(PCV20)で開始し、すべてプレベナー20で打ち終える必要があります。
PCV13とPCV15は交互接種可
ちなみに2024年4月からはじまったバクニュバンス(PCV15)に関しては、それ以前のPCV13のワクチンと交互接種しても、安全性・効果どちらも問題なかったので、交互接種がなされました。
2023年度に肺炎球菌ワクチンをはじめた方は、母子手帳をよくみると、肺炎球菌ワクチンのシールの色が違う方があると思います。
2024年10月以降から始める方はPCV20
厚生労働省からの通達で、2024年10月以降に肺炎球菌ワクチンを打ちはじめる方は原則プレベナー20(PCV20)と指示がでています。
このことから、当院では基本的に2024年10月以降からはじめる方はプレベナー20(PCV20)を接種しております。
まとめ:肺炎球菌ワクチンが変わります
- 2024年10月から、より幅広くカバーするワクチンに変更となる
- 2024年9月以前のワクチンでも十分な予防効果がある
- 新旧のワクチンで交互接種による安全性・効果のデータが不足しているので現時点では交互接種不可
ワクチン接種について不安や疑問がある場合は、遠慮なく当クリニックにお問い合わせください。