インフルエンザ治療薬の選び方:小児科医が解説する薬のポイントと当院での使い分け
- 2024年12月20日
- インフルエンザ
玉谷キッズクリニックの菅原です。
インフルエンザが大流行しています。毎日、インフルエンザ検査で陽性となる患者さん多数出ています。
今回は、インフルエンザ治療薬の特徴と、当院での処方方針について解説いたします。
インフルエンザ流行の現状
2024年9月頃から少しずつインフルエンザの方が出ていて、まだ流行しないな、と思っていたら12月中旬に一気に増えてきました。
いつ、だれがインフルエンザにかかってしまってもおかしくない状況です。
かかってしまった時にどのお薬が自分の子供にあっているんだろう?ということについて理解が深まればと思います。
当院で処方する主なインフルエンザ治療薬の特徴
タミフル(オセタミビル)
- のみ薬(カプセルまたは粉)
- 1日2回、5日間の服用
- メリット:
- 長年の使用実績がある
- 飲めたかどうかがはっきりする
- デメリット:
- 服用回数が多い
- 子どもによって苦手な味と感じることがある
イナビル(ラニナミビル)
- 吸入するタイプの薬
- 1日で治療完了(吸入回数は2回or4回)
- メリット:
- 1日で済む
- 服用忘れの心配がない
- デメリット:
- 正しく吸入する必要がある
- 体調が悪い時は吸入が難しい場合がある
ゾフルーザ(バロキサビル)
- 錠剤の飲み薬
- 1回の服用で治療完了
- メリット:
- 1回の服用で済む
- 服用が簡単
- デメリット:
- 耐性ウイルスの出現リスクが懸念される
- 小児での使用経験が比較的少ない
当院での治療薬選択の考え方
第一選択:タミフル
当院では、特に小児患者さんに対して、タミフルを第一選択薬としています。その理由は:
- 服用状況が確認しやすい
- 効果の予測が立てやすい
- 長期の使用実績による安全性が確認されている
イナビル(吸入タイプ)の選択の目安
以下のような患者さんには、イナビルの処方を検討します:
- しっかり吸入できる年齢・状態の方
- タミフルを内服することが困難な方
ゾフルーザ(1回だけの内服薬)選択の目安
- 成人(特にB型インフルエンザ感染の場合)
- 小児では12歳以上で複数回の内服や吸入が困難な方
薬剤選択の考え方
〇飲み薬を飲めるかどうか
〇吸入できるかどうか(おもいっきり粉を吸い込む動作ができるかどうか)
〇成人かどうか
この3点で考えています。
1日で終わる治療として、
- イナビル(吸入薬)
- ゾフルーザ(錠剤)
がありますが、インフルエンザにかかっているとかなりしんどいため、吸入が難しい子も多いです。
また、ゾフルーザは、知見が集積されていってはいますが、変異ウイルスの出現が懸念されています。
ゾフルーザによる変異ウイルス発現リスクは、年齢により異なり、小さい子でリスクが高くなっています。
詳しいことは、「日本小児科学会2023/24 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」に書かれています。
専門性が高い内容になりますが、気になる方はご覧ください。
以上のことから、当院としては、過去の実績や、変異ウイルスに関すること、吸入より内服の方が確実であることから
処方する場合には、基本的には「タミフル」を推奨しており、あとは患者さんの状況によってご相談しています。
タミフルで異常行動は起こすのか
インフルエンザの薬を使うと異常行動を起こすかどうかについて心配されている方も多いと思います。
以前、インフルエンザ治療中の小児の方が、ベランダから飛び降りたという事象があったからです。
厚生労働省から「タミフルと異常行動等の関連に係る報告書」が出ており、
タミフルと異常行動の因果関係は明確ではない、という内容がかかれています。
わかっているのは
薬というより「インフルエンザに罹患していることそのものが異常行動と関係していることが明確になった」としています。
つまり、
タミフルを飲む飲まないにかかわらず、インフルエンザが治るまでは異常行動に注意すべきであり、
〇お子さんを一人にしたりしない
〇マンションの方は窓にカギをかけておく
などの対策を十分に行うようにしてください。
痛くない検査で早期発見
当院では、患者さんの負担を軽減するため、痛くないインフルエンザ検査「nodoca(ノドカ)」を導入しています。
従来の検査だと、発熱してすぐには検査できませんでしたが、このnodocaでは発熱初日でも検査可能です。
熱が出て間もない、もしくは鼻に棒をつっこむ検査が嫌だ、という時に良い適応です。
詳しい検査方法については、当院のnodoca紹介ページをご覧ください。