RSウイルスとヒトメタニューモウイルスの違いと症状|重症化のサインと受診の目安
- 2025年2月8日
- ヒトメタニューモウイルス,感染症
RSウイルスが大流行…とまではいきませんが、咳と鼻水がひどい小さいお子さんでちらほら陽性がでているRSウイルス(アールエスウイルス)。
そして、先日、ブログも更新させていただいた、日本で大きな流行が心配されているヒトメタニューモウイルス。
お子さまが発熱や咳で体調を崩されると、お母さん、お父さん方は心配になられると思います。小さいお子さんがかかりやすい「RSウイルス(RSV)」と「ヒトメタニューモウイルス(hMPV)」は、よく似た症状を引き起こします。
2つのウイルスの違いや症状、重症化のサイン、受診の目安について、説明します。
「RSウイルス」と「ヒトメタニューモウイルス」
RSウイルス(RSV)とは
RSウイルスは、特に生後6ヶ月未満の赤ちゃんで重症化しやすい呼吸器ウイルスです。
毎年9月から12月にかけて流行のピークを迎える、冬のウイルスのイメージです。ただし、ここ数年はあまり季節性関係なく、夏や春に流行することもあったので、1年中注意が必要になってしまいました。
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)とは
ヒトメタニューモウイルスは、主に2歳未満の幼児に感染しやすい呼吸器ウイルスです。
1月から5月にかけての初春に流行することが多く、RSウイルスと比べるとやや穏やかな経過をたどりますが、通常のカゼと比べると熱や咳・鼻水が長引きひどいことは多いです。
RSとヒトメタニューモウイルスの「同じところ」
まず、両方のウイルスの共通点をご説明します:
1. 主な症状
– 5日ほど続く高熱
– 咳
– 鼻水
– 喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅーという音)
– 食欲の低下
2. 感染経路
– 感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染
– ウイルスが付着したものを触った後、口や鼻を触ることによる接触感染
3. 治療方法
– 特効薬はなく、対症療法が中心
– 十分な休息と水分補給が重要
– 症状に応じて解熱剤を使用
通常のカゼと共通していることも多いですが、普通のカゼと比べRSウイルスやヒトメタニューモウイルスでは、ゼーゼー・ヒューヒューすることがしばしばあり、また熱も5日前後続くことが多いので、「かなりひどいカゼ」とも言えます。
RSとヒトメタニューモウイルスの「違うところ」
次に、両者の重要な違いについてご説明します:
1. 流行する時期
– RSウイルス:主に秋から冬(9月~12月がピーク)
– ヒトメタニューモウイルス:主に冬から春(1月~5月がピーク)
2. 感染力の強さ
– RSウイルス:感染力が非常に強い(特に集団保育の場での感染リスクが高い)
– ヒトメタニューモウイルス:RSウイルスと比べると感染力はやや弱い
コロナウイルスやインフルエンザウイルスほどではありませんが、どちらも集団生活の場で感染が広がりやすいです。流後期には注意する必要があります。
3. 重症化しやすい年齢
– RSウイルス:生後6ヶ月未満の赤ちゃんで特に重症化リスクが高い
– ヒトメタニューモウイルス:2歳未満の幼児で重症化リスクが高い(ただしRSウイルスほどではない)
どちらのウイルスも小さい時に1回は必ずかかるものですが、はじめて感染するときにひどくなりやすいです。4歳、5歳でもひどくなる子はいますが、だいたい小さい子の方が重症化します。
4. 予防薬の有無
– RSウイルス:重症化リスクの高い赤ちゃん向けの予防薬(パリビズマブ)がある
– ヒトメタニューモウイルス:特別な予防薬はない
RSウイルスの予防薬(パリビスマブ:商品名シナジス)は、未熟児で生まれた子や、心臓の病気がある子が対象になりますので、ひろく一般的に接種されているものではありません。
対象になるようなお子さんがRSウイルスにかかると呼吸が止まってしまうことがあるなど、重症化リスクが非常に高いので接種する必要があります。
受診の目安
両ウイルスとも、以下の症状がある場合は早めの受診をお勧めします:
特に急いで受診が必要な場合
– 呼吸が速く、苦しそう
– ぐったりして元気がない
– 顔色が悪い
– 水分摂取ができない
年齢による受診の目安
– 生後3ヶ月未満:37.5度以上の発熱
– 3ヶ月~2歳:38度以上の発熱が24時間以上続く
– 2歳以上:38度以上の発熱が2日以上続く
熱の目安は大まかなものですが、早めに異常を感知するためにいったん受診したほうがよいのでは、という目安で記載しました。
予防方法
どちらのウイルスも、以下の対策が有効です:
1. こまめな手洗い・手指消毒(特に外出後、食事前)
2. マスクの着用
3. 適切な湿度管理(50%ほど)
4. 定期的な換気
5. 十分な睡眠と栄養バランスの良い食事
6. 流行期は人混みを避ける
特に、RSウイルスについては、生後6ヶ月未満の赤ちゃんがいるご家庭では、上記の予防対策をより慎重に行うことをお勧めします。
まとめ
ヒトメタニューモウイルスとRSウイルスは、多くの共通点がありますが、以下の点で大きく異なります:
1. RSウイルスの方が、乳児での重症化リスクが特に高い
2. 流行時期が異なる(RSは秋冬、ヒトメタは初春)。しかし、最近は季節性がなくなってきている
3. 基礎疾患のある子を対象にしたRSウイルスの予防薬がある
心配な症状がある場合は、遠慮なく医療機関にご相談ください。