2025年春、百日咳が流行しています。激しい咳や長引く咳に要注意|玉谷キッズクリニック【箕面市船場西の小児科】

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2025年春、百日咳が流行しています。激しい咳や長引く咳に要注意|玉谷キッズクリニック【箕面市船場西の小児科】

2025年春、百日咳が流行しています。激しい咳や長引く咳に要注意

最近の百日咳流行状況

玉谷キッズクリニックの菅原です。

春になりましたが、最近「百日咳(ひゃくにちぜき)」という病気が子どもたちの間で流行しているのをご存じでしょうか。ニュースでも取り上げられており、2025年4月上旬の1週間で全国の患者数が722人と過去最多を記録しました(ニュース記事はこちら→NHK.jp

厚生労働省もワクチン接種やマスク着用など基本的な予防策の徹底を呼びかけています。大阪市内でも百日咳の患者報告数が増加傾向にあり、2024年は126例と前年(20例)を大きく上回り、2025年も第14週までに106例が報告されています(大阪市のホームページ​city.osaka.lg.jp)。

特に乳児(赤ちゃん)が感染すると重症化して死亡する恐れもある病気で、実際に今年に入ってからの死亡例もでているようです。今回は、この百日咳について、症状や予防法を中心に解説します。

 

百日咳とはどんな病気?

百日咳は、その名のとおり「長引くしつこい咳」が特徴の感染症です​。原因は「百日咳菌」と呼ばれる細菌の感染で、咳やくしゃみなどの飛沫を介して人から人へうつります。潜伏期間(感染から症状が出るまでの期間)はおよそ7〜10日程度で、長いときは3週間近くになることもあります。

 

症状の経過

 初めは軽いかぜ症状(くしゃみ、鼻水、軽い咳など)で始まります。これを「カタル期」と呼び、およそ1〜2週間続きます

しかし咳は次第にひどくなり、発作的に連続して咳き込むようになります。

息もできないくらい激しい咳の発作が何度も起こり、息を吸うときに「ヒュー」と笛を吹くような音が出ることもあります(英語でWhooping Coughと呼ばれます)。この時期を「痙咳期(けいれん期)」といい、さらに2〜3週間程度続きます

咳発作の後には嘔吐してしまうことも珍しくありません。発熱はないか、あっても微熱程度であることが多いです​。

乳幼児では特に注意

特に乳幼児では症状が重くなりやすい点に注意が必要です。

生後6か月未満の赤ちゃんでは、典型的な「ヒューヒューと続く咳」が出ない場合もあります。その代わりに、息が止まったように見える無呼吸発作や、顔色が紫色になるチアノーゼ、けいれん発作などを起こすことがあります​

肺炎や脳症など合併症を引き起こすこともあり、実際に生後6か月以下の乳児では死亡例も報告されています

一方、年長児や大人でも百日咳にかかることがありますが、この場合は典型的な痙攣性の咳にならず「ただ長引く咳」のみで経過することもあります。単なる風邪と思って見過ごされることもありますが、周囲の赤ちゃんにうつしてしまう可能性があるため注意が必要です。

 

症状の回復期

その後、症状は徐々に落ち着いていきます(回復期)。激しい咳発作が少しずつ減ってゆき、発作が起こらなくなっていきます​

ただし、咳自体は完全に治まるまでに長い場合で2〜3か月近くかかることもあります

まさに「百日(100日)咳き込む」と言われる所以ですね。長引く咳は体力を消耗しますので、お子さんの様子を見ながら十分に休養させてあげてください。

百日咳の治療

百日咳と診断された場合、抗菌薬(抗生物質)による治療を行います。細菌を退治するお薬を適切に使うことで、それ以上症状が悪化するのを防ぎ、周りへの感染拡大も防ぐことができます。特に早期に治療を始めることが大切です。

ただ、つらいことに、有効な抗生剤を使ってもスパッと良くなるわけではあまりありません。イメージとしては、どんどんひどくなっていくことに歯止めがかかるが、咳はまだまだ続くというような感じです。

しかし、抗生剤に意味がないわけではなく、感染を広げる期間を短縮することができるので、百日咳と考えられる場合にはしっかり抗生剤を内服しましょう。

咳がひどい場合には咳止め薬など症状を和らげる治療(対症療法)も併用します

乳児が感染した場合は症状が急激に重くなることがあるため、入院のうえで酸素投与や吸引などの専門的なケアが必要になることもあります。

「咳が長引くな」と感じたら早めにクリニックにご相談ください。

当院では、百日咳LAMP法という検査を行っています。保険の関係上、6歳以上から検査が可能で、鼻の奥に綿棒をいれて検査を行います。検査会社に依頼するものなので、結果がでるまでは3~4日ほどかかります。

 

ワクチンによる予防と追加接種について

百日咳はワクチン接種で予防可能な病気です。現在、日本では定期予防接種として「五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)」(少し前は四種混合ワクチン、三種混合ワクチン)を乳幼児期に接種することで百日咳に対する免疫をつける仕組みになっています​

五種混合ワクチンは、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ・Hib(インフルエンザ菌b型)の5つを一度に予防できるワクチンで、生後2か月から合計4回接種します。ワクチンの普及により、小さいお子さんの百日咳は世界的に見ても激減しました

 

免疫の効果は減っていく

ただし、ワクチンの効果で得た免疫も時間の経過とともに少しずつ下がっていきます

乳幼児期にしっかり予防接種を受けていても、数年経つと抗体価(免疫の強さ)は徐々に低下してしまいます。特に就学前の5~6歳頃になると、赤ちゃんの頃に付けた百日咳への免疫が弱まって再びかかってしまう可能性があります​

実際、百日咳の抗体は10歳未満で大きく低下することが分かっており、小学校高学年(10歳前後)になると再び感染しやすくなるとも言われています。

 

追加のワクチン接種を

そこで、追加のワクチン接種(ブースター接種)で免疫を補強することが有効です。日本小児科学会でも、乳幼児期4回の五種混合ワクチン(もしくは四種混合、三種混合ワクチン)接種完了後に就学前にもう1回追加接種することを推奨しています

具体的には、百日咳を含む「DPT三種混合ワクチン」を5~6歳頃(幼稚園年長さん)を目安に追加で接種しておくと、免疫が再びしっかり高まります。

さらに余裕があれば、小学校高学年頃にもう一度追加接種(二種混合のワクチンの代わりに三種混合ワクチンとして百日咳もカバー)を検討しても良いでしょう。これらの追加接種は任意接種(自費)となりますが、お子さんを百日咳から守る有効な方法です。

もちろん、ワクチン以外にも普段からできる予防策があります。百日咳だから特別なことをする必要はなく、かぜ予防と同じ対策が基本です。具体的には、外出後の手洗い・うがい、咳が出るときの咳エチケット(マスクの着用や袖で口をおさえる)、体調が悪いときは無理をせず休む、といった習慣を徹底しましょう​

家族に赤ちゃんがいる場合、周囲の大人やきょうだいも体調管理に気をつけ、長引く咳があれば早めに受診するよう心がけてください。

 

玉谷キッズクリニックからのご案内

当院でも、百日咳を含む各種ワクチン接種を行っています。大切なお子さんを感染症から守るため、予防接種のスケジュールを確認して適切な時期に受けましょう。特に百日咳については以下の接種体制がありますのでご参考ください。

 

五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)定期接種

生後2か月から接種開始。通常4週間ごと(3~8週間隔)で計3回接種し、さらに1歳をこえてから3回目接種から6か月以上あけて4回目(追加)を接種します。標準的には生後2か月、3か月、4か月頃の計3回、1歳~1歳半頃に追加1回のスケジュールです。※五種混合ワクチンは公費で受けられる定期接種です。

 

三種混合ワクチン(DPT)追加接種(任意接種)

 幼稚園年長~小学校高学年頃のお子さんを対象に、百日咳の追加予防を目的としたDPTワクチンの追加接種を行っています。当院でも自費診療として接種可能です。就学前後でもう一度百日咳の免疫を高めておくことで、小学校以降の流行にも備えることができます。ご希望の方はWEBからご予約ください。不明点があれば、お電話いただくか受診の際に受付までご相談ください。

予防接種について不明な点や不安があれば、いつでも当院にご相談ください。お子さん一人ひとりに合わせたスケジュールの調整や、ワクチンに関するご質問にも丁寧にお答えいたします。


 

パンダ先生菅原からのひとこと

百日咳は、その名前から「怖い病気では?」と不安になるかもしれません。

実際、赤ちゃんがかかってしまうと、小児科医師としてはヒヤッとします。

しかし、きちんと予防接種を受けて早めに対処すれば過度に心配する必要はありません。

ご兄弟がおられる場合は、兄弟から赤ちゃんへうつしてしまうリスクを減らすために三種混合ワクチンを接種して周囲から百日咳を予防することも非常に大切です。

私たちクリニックのスタッフ一同、お父さんお母さんと一緒にお子さんの健康を守っていきたいと願っています。気になる症状やご不明な点がありましたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。