子どもの水いぼ治療:痛みの少ないmBFクリームという選択肢
子どもの皮膚にできる「水いぼ」にお困りの方へ
「水いぼ」はウイルスによる感染症で、小児の約5〜10%が感染するとされる比較的ありふれた病気です。
見た目は肌色〜白色の小さなぷつぷつで、中央にくぼみがあり、水ぶくれのように見えるのが特徴です。
水いぼ自体は痛みはないものの、ときに強いかゆみを伴い、プールや兄弟間で感染が広がることもあり、保護者の方にとって悩ましい皮膚トラブルの一つだと思います。
基本的には時間とともに自然に治ることが多いですが、長いと2〜3年かかることもあります。その間に数が増えたり、かゆみでかきむしったり、他の人にうつらないかと心配しないといけなかったりします。
今回のブログでは、水いぼの治療法と当院で提供している4つの治療方針についてご紹介し、とくに痛みが少なく効果も期待できる外用薬「mBFクリーム」について紹介します。
水いぼとは何か?その症状と経過
水いぼ(医学用語で「伝染性軟属腫」)はウイルスによる皮膚感染症です。
主に1〜10歳くらいまでの子どもに多くみられ、ぽつぽつとした小さなおでき(いぼ)が体や手足にできるのが特徴です。
いぼの色は肌色〜白色で、中央がへこんだドーム状をしており、触るとやや柔らかい感触があります。水を含んだような見た目から「水いぼ」と呼ばれますが、中にはウイルスを含むクリーム状の物質が詰まっています。このいぼ自体は痛みを感じることはほとんどありません。ただし、かゆみが強いこともあり、ひっかいたり潰したりすると周囲の皮膚にウイルスが広がって数が増えてしまうことがあります。
また、乾燥肌やアトピー性皮膚炎があるお子さんは感染しやすい傾向が指摘されています。
水いぼは先述の通り自然に治ることが多い病気です。免疫がウイルスを排除すればいぼは自然消滅しますが、個人差はあるものの中には2年以上かかるお子さんもいます。
自然に治るとはいうものの、治癒を待つ間に増殖・伝染するリスクがあることや、美容的・衛生的な観点から「できれば早く治したい」と希望される保護者の方も多いのが現状です。
また園や学校によっては、水いぼがあるとプールを控えるよう指導される場合もあり、対応に悩むこともあるでしょう。
(水いぼがあっても、ビート板の共有は避けるべきですが、プールそのもののは医学的には禁止されていません)
水いぼ治療の選択肢(4つの治療方針)
水いぼへの対応については、実は医療機関によって方針が異なることがあります。
摘除(つまんで取る治療)を積極的にすすめる場合もあれば、「放置で良い」と経過観察を推奨する場合もあり、保護者の方が戸惑うことも少なくありません。
当院では、以下の4つの治療方針をお話ししご相談させていただいています。それぞれの方法の特徴とメリット・デメリットを整理していきます。
-
経過観察(自然治癒を待つ) – 自然におさまるものでることから、無理に治療をせず様子を見る選択もあります。痛みや副作用が一切ないのが利点です。ただし治癒までに半年~数年かかる可能性があり、その間にいぼが増えたり他のお子さんにうつしてしまうリスクがあります。また見た目の問題からご家庭や周囲で心配が続く場合もあります。
-
漢方内服(ヨクイニン) – 体の中から治す方法として、ハトムギ由来の生薬「ヨクイニン」の内服療法があります。ヨクイニンには皮膚のウイルス感染に対する免疫力を高める効果があると言われており、いぼを徐々に小さくする目的で用いられます。副作用が少なく、漢方ではありますが、子どもたちはポリポリと食べます(まるでお菓子のように)。使いやすいと言う意味では非常にオススメですが、効果に関しては補助的です。なお、ヨクイニンの保険適応は尋常性疣贅です。
-
摘除(ピンセットでの摘出) – (当院では行っておりません)。従来から皮膚科で行われてきた方法です。表面麻酔テープをしばらく貼付した上で、いぼをピンセットや専用の鉗子で一つ一つつまみ取ります。直接ウイルスを取り除くため即効性が高く、短期間で治療可能なのが最大のメリットです。しかし、非常に痛い治療であり、数が多い場合は痛みが強すぎて対処が難しいことも事実です。
-
mBFクリーム外用(痛みの少ない塗り薬治療) – (当院で一番オススメしています!)銀イオンを含む水いぼ治療専用クリームで、患部に塗布することで改善が見込めます。詳細は後述しますが、塗るだけのお薬で、お子さんに痛みを与えないのが最大の特徴です。3ヶ月程度根気よく塗り続けることで約8割の症例で水いぼが改善したとのデータもあります。
以下では、この④mBFクリームによる外用療法について、詳しく解説いたします。
痛くない水いぼ治療「mBFクリーム」とは

水いぼ治療専用の外用薬「mBFクリーム」(15gチューブ)。銀イオンとサクランを主成分とする保湿クリームタイプの薬剤です。
mBFクリーム(正式名称:3A M-BF CREAM)は、水いぼ(伝染性軟属腫)治療のために開発された世界初の専用保湿クリームです。主成分として銀イオンを配合し、これがウイルスに対して抗ウイルス作用を示します。銀イオンは古くから傷の消毒などに用いられてきた成分で、低濃度でも細菌・真菌・ウイルスを抑制できることが報告されています。
mBFクリームは見た目は白色のクリームで、塗り心地はしっとりしています。使い方は簡単で、1日2回程度、清潔な状態の患部に塗るだけです(いぼ一つ一つに薄く塗り広げます)。塗布後は絆創膏などで覆う必要は特になく、そのまま日常生活を送れます。ピンセットで物理的に取る処置と比べて痛みが全くないため、小さなお子さんにもストレスなく実施できる点が大きな利点です。処置を嫌がるお子さんや、多発して摘除が難しいケースにも対応できる治療です。
mBFクリームの効果~赤くなったら効いてきたサイン?
肝心の効果はどのくらいで現れるのか、気になるところだと思います。個人差がつよく出るところですが、おおむね3~6ヶ月ぐらいで改善します。
塗布開始から数週間~1、2ヶ月で水いぼの部分が少し赤くなってきて反応してきます。さらに1~2カ月ぐらいすると徐々に縮小・消退していきます。
新しい水いぼもできますが、なくなっていくスピードの方が早いので徐々に改善していきます。
完治までどれだけかかるかは、個数の多さと、1つあたりの大きさです。たくさんあると、治るまでに新しい水いぼができるリスクがありますし、大きいとさすがに小さくなるまでは時間がかかります。
それらを踏まえて、おおむね3~6ヶ月ぐらいが治療の目安です。

mBFクリーム治療開始前

mBFクリーム開始6ヶ月
(写真はご家族の同意を得て掲載):
このお子さんは、全身に多数の水いぼができ、当初はヨクイニンの治療を行っていました。改善がみられず、かゆみでかきむしってしまい、痛々しい背中でしたが、mBFクリームを開始して徐々に改善し、mBFクリーム開始6ヶ月の時点で、完治一歩手前まで改善しました。
痛みなく塗るだけの治療でここまで改善が期待できるのは、お子さんにとって大きなメリットです。痛みを与えずに治療できる意義は大きいと考えており、お子さんが笑顔で治療を続けられることを最優先に考えれば、mBFクリームは有力な選択肢となり得ます。
安全性と副作用について
お子さまに使う薬となると、その安全性も気になるところです。
mBFクリームの主成分である銀イオンは、先述の通り抗ウイルス・抗菌効果が強力ですが、人体には極めて安全であることが分かっています。
実際、銀は皮膚治療の分野で古くから消毒薬や創傷被覆剤として使われてきました(そういえば、研修医時代に、ヤケドの激しい人に銀を含む薬剤を使用しているを見たことを思いだしました)。
mBFクリーム自体も、ステロイド成分などは含まず、銀イオンと保湿剤が主体の外用薬です。
乳幼児から使用可能で、塗布による全身への影響はほとんどないと考えられています。
臨床使用においても、副作用はごく稀で軽度の接触皮膚炎(かぶれ)0.5%、塗布部のかゆみ1.1%程度にとどまり、重篤な副作用は報告されていません。
万一、塗布部位がひどく赤く腫れたりただれを生じた場合は使用を中止を検討しますが、そのようなケースは非常に少ないです。
むしろ適度な赤みは、改善過程の軽い炎症反応の証でもありますので、継続して様子を見ることが大切です。
mBFクリームは自費です(費用と入手方法)
mBFクリームは現在、保険適用外(自費)のとなっています。当院では1本あたり2,200円(税込)で販売しております。
必要な本数は、水いぼの範囲によって変わりますが、ざっくりとは手のひら1枚におさまる範囲であれば、1本で3~4週間もちます。
市販はされておらず、医療機関でのみ取り扱いとなりますので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
まとめ:水いぼ治療にmBFクリームという新たな選択肢を
水いぼは放っておいてもいずれ治るとはいえ、親御さんにとっては「なるべく早く、安全に治してあげたい」と心配になられると思います。
摘除による治療は即効性がありますが、どうしても痛みや怖さの問題が付きまといます。
ヨクイニンも継続のしやすさではおすすめですが、効果は限定的です。
mBFクリーム療法は痛みがなく、ご家庭で手軽に取り組める治療として大きな意義があります。範囲が広くなければ、実際には約2〜3ヶ月の使用で改善に向かうことが多いです。自費診ははなりますが費用もそれほど高額ではなく、何より痛みに対して優しい治療法として非常におすすめできます。
実際に、自分の子供にどの治療法が良いのか、mBFクリームはどんなものだろうか、そもそもこれって水いぼなんだろうか?と、少しでも疑問や心配なことがあれば、お気軽に外来でご相談ください。