
ゼーゼー
ゼーゼー
「胸からゼーゼー音が聞こえる…苦しそうで心配」
「風邪だと思っていたけど、だんだん呼吸が早くなってきた…」
「夜になるとヒューヒュー音が強くなる。喘息なのかも…?」
お子さまの呼吸が「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と聞こえると、「息が苦しいのではないか」「喘息の始まりでは?」と心配される保護者の方も多いのではないでしょうか。特に乳幼児はうまく症状を言葉で伝えられないため、親としては不安も大きくなります。
このページでは、小児科専門医の視点から、「ゼーゼー・ヒューヒュー(喘鳴)」の原因、見極め方、受診の目安、治療方法、家庭でできるケアなどについて、わかりやすくご説明します。お子さまの呼吸状態に不安を感じたときの参考になれば幸いです。
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音は、「喘鳴(ぜんめい)」と呼ばれ、気道(空気の通り道)が狭くなることで発生する異常な呼吸音です。
原因に応じて治療方法が異なりますが、共通して重要なのは「呼吸状態の評価」と「気道の炎症や閉塞を取り除くこと」です。
治療の中心は以下の通りです:
診察では、以下の点を総合的に確認します:
✓ 息を吸うたびに胸やのどがへこむ(陥没呼吸)
✓ ゼーゼー・ヒューヒュー音が続いている
✓ 顔色が悪く、苦しそうにしている
✓ 呼吸が速く、普段の倍以上ある
✓ 発作を何度も繰り返している
✓ 咳が長引いていて、特に夜間に悪化する
①:ゼーゼー・ヒューヒュー音
気管支が狭くなることで、空気がスムーズに通れず、笛のような「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が出ます。ひどいと聴診器なしでも聞こえまし、背中や胸に耳をあてても聞こえることがあります。
②:呼吸が苦しそう・胸がペコペコする
肋骨の間や鎖骨の下が呼吸のたびにへこむ場合(陥没呼吸)は、「酸素が足りてなくて苦しいよ!」という呼吸困難のサインです。小さなお子さんほど注意が必要です。
③:咳と一緒にゼーゼーが出る
風邪やウイルス性の気道感染のあとに咳が続き、ゼーゼーが出ることがあります。気道の炎症が残っているサインかもしれません。
④:夜間や運動後に症状が悪化
気温の変化、夜間の冷気、運動後などにゼーゼーが強くなる場合は、喘息体質が関係している可能性があります。
⑤:呼吸が速い・顔色が悪い
呼吸回数が増え、顔色が青白くなっている場合は、酸素がうまく取り込めていない可能性があります。夜間でもすぐに医療機関を受診してください。
①:気管支喘息
慢性的な気道の炎症があり、季節の変わり目や風邪、運動などをきっかけに発作的にゼーゼーが出ます。夜間や明け方の症状悪化が特徴で、気管支拡張剤の吸入を行うと一時的にでも良くなることが診断の目安になります。抗ロイコトリエン拮抗剤の内服や、吸入ステロイドを用いた長期管理が必要なこともあります。
②:細気管支炎(RSウイルスなど)
主に乳児に多く見られるウイルス性の感染症です。発熱・咳とともにゼーゼー音が出現し、呼吸困難になることがあります。入院管理が必要な場合もあります。
③:ウイルス性気道感染後の気道過敏
風邪の回復後でも気道が過敏になっており、軽い刺激でゼーゼー音が出ることがあります。特に1〜2歳児に多く、繰り返すことがあります。
④:アレルギー性疾患との関係
ハウスダスト、ダニ、ペットなどのアレルゲンが引き金となり、喘鳴が出ることもあります。家族にアレルギー体質がある場合は要注意です。
⑤:異物誤飲や構造的な問題
まれに、気道に異物が入ったり、気道の構造異常があることで喘鳴が続くことがあります。片側だけのゼーゼー音や突然の症状の場合は注意が必要です。
①:室内環境を整える
ダニ・ハウスダスト・花粉などのアレルゲンが発作の引き金になることがあります。掃除や空気清浄機の活用、寝具の清潔管理が大切です。
②:加湿と水分補給
乾燥した空気は気道に負担をかけます。加湿器や濡れタオルで湿度を保ち、こまめな水分補給で粘膜を守りましょう。
③:安静を保つ
発作が起きているときは無理をせず、安静に過ごすことが基本です。呼吸が苦しそうなときは座った姿勢のほうが呼吸しやすい場合もあります。
④:発作の兆候を知る
ゼーゼーが出る前に咳、機嫌の悪さ、息が浅いなどの兆候が現れることがあります。早めに対応できるよう普段から観察しましょう。
⑤:吸入器の使い方を確認する
吸入治療が必要なお子さまの場合、ご家庭での正しい使い方を一緒に確認しましょう。「うちの子に吸入器を買ってあげたほうがいいのかな?」と必要性がよく分からないという場合もご相談できますので、受診をお願いします。
①:気管支拡張薬(吸入・内服・貼り薬)
気道を広げて空気の通りを良くする薬です。発作時には吸入薬が即効性があり、必要に応じて内服薬も併用します。貼り薬のタイプもあり、飲み薬が苦手でも使いやすいことから、当院ではよく処方しております。
②:吸入ステロイド薬
炎症を抑えるために使われる薬で、喘息の長期コントロールには欠かせません。毎日継続することで症状の出にくい体質にします。
③:抗アレルギー薬・抗ロイコトリエン拮抗薬
アレルギー体質が背景にある場合、日常的に症状をコントロールする目的で使用されます。抗ロイコトリエン拮抗薬は喘息のコントロールには非常に重要な薬ですので、数か月~数年つかっておられる方もあります。
④:抗菌薬(細菌感染が疑われる場合)
細菌による肺炎や副鼻腔炎が合併している場合には抗菌薬を使用します。ただしウイルス性であれば使用しません。
⑤:入院による酸素管理・点滴治療
呼吸困難が強く、自宅管理が難しいと判断された場合は、酸素吸入・点滴などを行うために入院が必要になることもあります。
Q:ゼーゼー音がするけれど、熱はありません。様子見でよいですか?
A:熱がなくても、呼吸が苦しそうだったり、胸のへこみがある場合は早めに受診してください。
Q:夜だけゼーゼーします。喘息なのでしょうか?
A:夜間に悪化するゼーゼーは、喘息の可能性があります。繰り返すようなら診断のための検査や治療が必要です。当院ですべての検査ができるわけではないので、必要性が高い場合は、大きな病院を紹介させていただきます。
Q:吸入薬を使うと治まりますが、やめてよいですか?
A:症状が落ち着いても、自己判断で中止せず、医師の指示で段階的に減らすことが大切です。通常は数か月から数年にわたって治療が必要になります。
Q:喘息かどうかは何歳から診断できますか?
A:年齢で区切るというよりは、何回ぐらい発作をいつから繰り返しているのか、呼吸音の異常がないのか、ということが大事です。ある程度大きな年齢になってくると呼吸機能検査でより詳細に喘息の診断が可能となりますが、最低でも6歳以上にならないと検査は難しいです。6歳未満でも喘息様の発作を繰り返す場合、喘息に準じた治療が必要となります。
Q:ゼーゼーがあっても保育園に行かせていいですか?
A:軽症で元気があり、熱もなく、咳も落ち着いていれば登園可能なこともありますが、無理をすると悪化するので、できたらお休みしてしっかり治すほうが大事です。
Q:家族に喘息がいると、うちの子もなるのでしょうか?
A:喘息は遺伝的な要素がありますが、発症するかどうかは環境や体質によって異なります。
「ゼーゼー」は、お子さまの呼吸器のSOSサインかもしれません。繰り返す症状や、呼吸の異常を感じたら、どうぞお早めにご相談ください。
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